よく、「結婚式のビデオ撮影は難しい」といわれます。確かに、その通りだと思います。

式場や披露宴会場は、演出の都合で照明を暗くしている場合も多いですし、参列者が多い場合には、撮影ポジションの確保すらうまくいかない場合もあります。ましてや、普通は一生に一度のこと(そうでない人もいますが…)ですから、ビデオ撮影の失敗が許されません。

個人的に撮るだけならまだしも、「配布用のDVDもつくってね」と正式に依頼されて撮る場合なら、その緊張感たるや相当なものです。急に撮影を依頼されて、何をどうすれば分からないまま、ぶっつけ本番で撮ると、かなり悲惨な映像になりかねません。そこで、結婚式のビデオを撮影する場合に、これだけは実践したほうがよいということを簡単に説明しようと思います。

結婚式の前に打ち合わせをしておこう

事前に十分な準備がないまま、結婚式当日にいきなり撮影しようとしても、肝心の場面を撮り逃がしたり、場違いな場所から撮影したりと、散々な目に合う可能性が高いです。

必ず、新郎新婦や親族、また式場関係者と、結婚式や披露宴の進行スケジュール、どのタイミングでどの位置に新郎新婦がいる予定であるかといった詳細な段取りを、事前に把握しておきましょう。

シミュレーション&ロケハンしておこう

内容や順番に多少の差はありますが、結婚式のビデオ撮影は、非常に多岐にわたります。まさに山ほどのビデオ撮影が必要です。カメラマンが複数いない限り、すべての場面をもれなく撮影することはほぼ不可能に近い状況となります。

もし、あなたがひとりで撮影する場合、それぞれの場面において、どの位置から撮れば理想かや会場内の明るさなどを事前に把握しシミュレーションしておいた上で、当日の式典の進行状況によって臨機応変に対応することが必要となります。そのために、できるだけ事前に会場をロケハン(下見)しておくようにしましょう。

最低限シミュレーションしておくべきこと

結婚式前には入念な打ち合わせをしておいたほうが良いのは言うまでもありませんが、さまざまな事情により、結婚式直前に急遽ビデオ撮影を頼まれる場合もあるでしょう。その場合、十分な打ち合わせができないことが想定されます。そういった場合でも、最低限シミュレーションしておくべきことがいくつかあります。

【出入りするドアと経路に応じた撮影位置】
新郎新婦が入場するドアと経路の把握が重要です。「そんなの普通は分かるだろ?」と思うかもしれませんが、どのドアから入ってくるのか分かりにくい結婚式が意外に存在するものです。

また、バージンロードが明確な場合は問題ないですが、式によっては会場内を半周する形で入場するような場合もあります。また、披露宴でお色直しが複数回行われる場合があり、その都度入場方法が異なったり、会場内を歩くルートが違う場合も多いですから、念のため確認しておくようにしましょう。さらに、新郎新婦の退室時のルートも把握しておくようにしましょう。

そして忘れてはいけないのが、立ち入ってはいけない場所が必ず存在します。ダメな場所でも進行のタイミングによっては大丈夫な場所もあります。立ち位置可否については式場支配人様と事前に打ち合わせで確認しておきましょう。

【指輪交換の際の新郎新婦を撮る位置】
指輪交換の場面をきれいに撮影するためには、特に撮影場所に気を配る必要があります。指輪交換の際の手指が、新郎新婦の身体や会場設備などに隠れてしまわない場所を、事前に把握しておいたほうがいいでしょう。

【来賓の祝辞の撮影位置】
来賓の祝辞は、人生の役に立つものが多いですが、来賓ばかり写すと単調な映像となる場合も多いものです。来賓を前面に出したうえで、新郎新婦が一緒にうまく収まる構図で撮影するのが理想的です。

ひとつのテクニックとして「言葉の切れ目」で被写体を変える方法です

・「~~○○でした」で新郎新婦に
・「~~がありました」で客席に
・「~~よかったです」で来賓に
言葉の切れ目で被写体を変えていくことで、必要なカットすべて得ることが可能です。

新郎新婦が両親へ感謝を述べる場面の撮影位置

結婚式・披露宴を通じて最も感動的な場面であり、まさにクライマックスです。

新郎新婦と両親の双方が涙ぐむ場面を撮影するためには、カメラを2台使うのがベストです。但し、1台のみで撮影する場合には、双方が一緒に画面に収まる場所から撮影するか、そうでない場合には、時折カメラの向きを変えて双方を交互に撮影するようにします。但し、頻繁にカメラの向きを変えすぎると、見づらい映像になりますので、ほどほどにしましょう。

【ビデオカメラの選定および設定方法】
ビデオカメラおよびカメラマンにとって、結婚式の撮影は、最も難しく、責任重大な撮影現場のひとつです。失敗が絶対に許されない上、商品撮影やモデル撮影のように、心ゆくまで時間をかけてたっぷり撮るという撮影方法が通用しない、「一発勝負」の現場です。

また、ムードを演出するために薄暗くしたり、逆に、スポットライトをガンガン浴びたりと、明暗の差が大きいのも特徴です。このような条件で上手に撮影するには、高性能なビデオカメラを使うのが最も理想的です。

ただ、予算の都合でビデオカメラに多額の投資ができない場合もあるでしょう。その場合は、少なくとも、暗所性能に優れた機種を用いるようにします。購入が難しい場合は、レンタルするという手もあります。

もし、暗所性能の低い旧式のビデオを使わざるを得ないという場合には、暗所の場面では、たとえば最新のスマートフォンを持っているのであればその動画撮影機能を併用したり、コンパクトデジカメやデジタル一眼カメラで動画や静止画を撮るというのもひとつの手です。編集段階でデジカメやスマートフォンで撮った映像を織り交ぜてスライドショーをつくることもできます。

ビデオカメラの設定については、たいていの場合、「オート」で十分ですが、「マニュアルモード」を搭載している機種の場合には、絞りを大きめに開き、さらに、感度を上げ気味にすると、明るめの雰囲気で撮影することができます。

また、披露宴によっては、余興としてビデオを上演する場合がありますが、この場合、ビデオカメラのシャッタースピードを適切に設定(電源が50Hzの東日本は1/100、60Hzの西日本は1/60に合わせる)しないと、スクリーンを撮影する際に縞模様が発生し、見苦しい録画映像となってしまうので注意したほうがいいでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか? 結婚式の撮影ではするべきことが多く、テクニックが要求されます。

但し、何事も経験です。最初から完璧はありませんし、プロのブライダルカメラマンでも、今日は完璧な撮影だったと思うことなど、一度もありません。まずは、欲張りすぎず、最低限押さえておいたほうがいい項目から気軽に実践してみることをオススメします。

素敵な結婚式を一生に残る思い出にするためのビデオ撮影のコツをぜひお役立て下さい。